2026.04.10

改正医療法によるオンライン診療規制に伴う医療広告規制の変容
~その1 医療広告規制と「オンライン診療受診施設に関する広告」規制~

のぞみ総合法律事務所
弁護士 山田 瞳

 

1.はじめに

 医療法の2025年改正により、医療法上に、「オンライン診療」及び「オンライン診療受診施設」の定義規定と、これらに関連する総体的な規律規定が新設され、2026年4月1日に施行されました。
 これに伴い、医療法に、従前の医療広告規制の規定とは別途、「オンライン診療受診施設に関する広告」を規制する規定が新たに設けられて(同法6条の7の2)、医療法が規制対象とする広告が拡大し、医療広告告示や従前の医療広告ガイドラインも改訂されました。医療広告ガイドライン上、医療広告と「オンライン診療受診施設に関する広告」とを総称するものとして「医療広告」という文言が使われるようになったことから、従前の「医療広告ガイドライン」という通称も、「医療広告ガイドライン」に改訂されています(以下では、改訂後の同ガイドラインを「医療広告ガイドライン」といいます。)
 今般の医療広告等ガイドラインの主な改訂点は、次のとおりです。

 
 本連載では、今般の医療法改正による医療広告規制や「オンライン診療受診施設に関する広告」規制の内容や考え方について解説します。第1回は、医療広告該当性と、「オンライン診療受診施設に関する広告」該当性の判断要件の整理についてです。

 

2.2025年改正医療法による「オンライン診療」と「オンライン診療受診施設」の明記等

 これまで医事法制上の明文の規定なく、厚生労働省通知やガイドラインの運用によって実施されてきたオンライン診療について、法制上の位置付けを明確化することでより適切な形での実施を図るため、2025年医療法改正により、「オンライン診療」及び「オンライン診療受診施設」の定義規定とこれらに関連する総体的な規律規定が新設されました。

 「オンライン診療」と「オンライン診療受診施設」の提供に関する医療法上の定義と規律の概要は次の表のとおりです[1]。なお、これらの規律において、診療は、保険診療であるか自由診療であるかを問いません。次の表中では、医療法を「法」と、医療法施行規則を「施行規則」といいます。

オンライン診療 オンライン診療受診施設
定義 医師又は歯科医師の使用に係る電子計算機と、患者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用し、映像及び音声の送受信により、医師又は歯科医師及び遠隔の地にある患者が相手の状態を相互に認識しながら通話することが可能な方法による診療(法22Ⅰ)。 施設の設置者が、業として、オンライン診療を行う医師又は歯科医師の勤務する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に対して、その行うオンライン診療を患者が受ける場所として提供する施設(法22Ⅱ)[2]
提供されるサービス内容(提供先) 診療(遠隔地の患者) オンライン診療を受ける場所の提供(医療機関)
提供主体 医師又は歯科医師 施設設置者である個人又は法人。
※設置者について、医療従事者であること等の要件は設けられておらず、会社等の営利法人でも可[3]
提供の実施に要する手続 都道府県知事等への届出[4] 施設所在地の都道府県知事等への届出(設置後10日以内)
(法8Ⅱ)
遵守すべき主なルール
  • オンライン診療基準(法143Ⅰ、施行規則963~同9619[5]
  • オンライン診療実施病院等の管理者が行うべき措置(法144、施行規則9620
提供主体に対する指導監督主体

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【改正医療法によるオンライン診療とオンライン診療受診施設イメージ】

 

~厚生労働省第6回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会資料「オンライン診療に関する広告等について」より~

 

3.医療法が規制対象とする「広告」の拡大について 

(1)医療広告該当性の判断要件の拡充

ア 医療広告該当性の判断要件についての医療広告ガイドラインの改訂

「医療広告」とは、医業・歯科医業として病院・診療所が提供する医療「サービス」の広告をいいます(医療法6条の5Ⅰ)。
 また、「医療広告」に該当するための要件として、従前の医療広告ガイドラインは、次の2つの要件を定めていました。

Ⅰ.患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性
Ⅱ.医業若しくは歯科医師業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性

 今回の改正法で、オンライン診療受診施設という場所で患者がオンライン診療を受けることができることが明文化されたことに伴い、改訂後の医療広告等ガイドラインでは、「医療広告」の要件について、次のような追記がされました(下線部が追記部分)。なお、※の要件の名称は筆者によります。

Ⅰ.患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性
Ⅱ.医業若しくは歯科医師業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院、診療所若しくはオンライン診療受診施設名称が特定可能であること(特定性
Ⅲ.医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する内容であること(※広告内容が医療サービスに関するものであること

  イ 改訂箇所の実務への影響

 新設された要件Ⅲは、「オンライン診療受診施設に関する広告」の規制が新たに設けられたことに伴い、病院又は診療所という医療機関が提供する医療サービスについての広告(医療広告)を、オンライン診療受診施設が提供する診療のための場所提供サービスについての広告から、明確に峻別する必要が生じたことによって設けられたものと考えられます。
 前記のとおり、元来、医療広告とは、医療サービスについての広告ですので、要件Ⅲは、このことを確認的に規定したにすぎず、これが加わったからといって、これまでの医療広告規制の実務に影響を与えるものではないといえます。
 これに対し、要件Ⅱの追記部分については、その広告上、オンライン診療の提供主体である医療機関の名称が特定可能な状態になくとも、当該医療機関が連携・利用するオンライン診療受診施設の名称さえ特定可能な状態にあれば、当該オンライン診療という医療サービスの提供主体である医療機関についての特定性を充足し得るとしたものです。この点は、医療広告該当性の判断を広げる方向での改訂であり、実務上の影響があり得ると考えられ、留意を要します。
 この点の追記を行った当局の考えは必ずしも明らかではありませんが、脚注6に記載のとおり、当局は、オンライン診療受診施設の設置者には、その連携する医療機関の名称等を公表する義務があるとしていますので、広告に接する消費者において、オンライン診療受診施設の名称さえ特定できれば、連携する医療機関の名称も容易に特定できると考えているのかもしれません。

   ウ 事例検討

    オンライン診療受診施設である商業施設内ブース「X」に関する次の広告には、医療法上どのよ
   うな問
題があるでしょうか。

 Xでは、クリニックに行かなくても、オンラインで医師による〇〇医療ダイエットの診療を受けられます!多くの芸能人も通院するあの人気クリニックのメニューがオンラインでお手軽に!

このような広告は、

    • 誘引性あり(要件Ⅰ充足)、
    • 医師の氏名や診療所の名称は特定できないものの、オンライン診療受診施設の名称(「X」)が特定可能なので、特定性あり(要件Ⅱ充足)、
    • 医療機関が提供する医療サービスについての広告であるので、「広告内容が医療サービスに関するものであること」にあたる(要件Ⅲ充足)

として、当該医療サービスを提供する医療機関の医療広告に該当し、医療広告規制を受けます。
 そして、「多くの芸能人も通院するあの人気クリニック」の表現は、医療広告規制が禁止する比較優良広告に該当し医療法6条の5Ⅱ①、同規制に違反する可能性が高いといえます。

 

(2)オンライン診療受診施設に関する広告の定義と判断要件の新設

 従前の医療広告ガイドラインでは、広告規制の対象範囲について、医療広告の定義の説明を置くのみでしたが、今回の改訂により、次のとおり、「オンライン診療受診施設に関する広告」の定義と判断要件の説明が新設されました。なお、※の要件の名称は筆者によります。

Ⅰ.患者の、オンライン診療受診施設でのオンライン診療等を誘引する意図があること(誘引性
Ⅱ.オンライン診療受診施設の名称が特定可能であること(特定性
Ⅲ.医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する内容ではなく、オンライン診療受診施設に関する内容であること※広告内容がオンライン診療を受ける場所の提供サービスに関するものであること

 

 要件Ⅰ及びⅡは、従前から医療広告の要件として認められた誘引性及び特定性の要件を、そのままオンライン診療受診施設に関する広告の要件に流用したものです。
 他方で、要件Ⅲは、オンライン診療受診施設が提供するオンライン診療を受ける場所の提供サービスについての広告を、医療機関が提供する医療サービスについての広告(医療広告)から、明確に峻別するために設けられたものと考えられます。
 このように、「オンライン診療受診施設に関する広告」に関する規制は、これまで医療法では規制していなかった「オンライン診療受診施設に関する広告を」全く新しく規制対象とするものですので、実務への影響は必至です。

 

(3)小括~医療広告等ガイドラインにおける医療広告とオンライン診療受診施設に関する広告の整理~

 改訂された医療広告等ガイドラインにおける医療広告の要件とオンライン診療受診施設に関する広告の要件に則れば、これら2つの広告については、その内容から、次のように整理されます。

 なお、いずれの広告も、サービスについての広告ですので、広告規制の一般法である景品表示法による優良誤認表示、有利誤認表示やステルスマーケティング規制にも服することは、当然の前提となります(「施行から2年・景表法ステマ規制の執行動向~措置の対象となる表示類型から確約手続まで~」もご参照下さい)。

 

4.広告規制の名宛人(誰が医療法違反による取締りを受けるか)について

(1)改正によっても「何人も」規制には変わりないこと

 医療広告規制(のうちでも虚偽広告の禁止)を定めた医療法6条の5等の規定は、「何人も、…広告をしてはならない」として、医療広告規制は、いかなる者が当該医療広告を行った場合であっても、広く、その広告作成者に対して及ぶことを定めています。すなわち、医療広告規制による取締りの対象主体は、医療を提供する医療機関に限られません
 今回の改正で新設された、オンライン診療受診施設に関する広告規制を定める医療法6条の7の2の規定も、「何人も、オンライン診療受診施設に関して、…の場合を除いては、広告をしてはならない」としており、いかなる者が当該オンライン診療受診施設に関する広告を行った場合であっても、広く、その広告作成者に対してこの規制が及ぶことを定めています。すなわち、ここでも、オンライン診療受診施設に関する広告規制による取締りの対象主体は、オンライン診療受診施設設置者に限られないのです。

 

(2)事例検討

 前記2の医療広告の要件とオンライン診療受診施設に関する広告の要件の整理と、これらの広告に対する規制の名宛人についての整理を組み合わせると、次の表のとおりとなります。

広告事例 適用される広告規制 取締りの対象主体
A病院が作成した「当病院は、●●駅前でオンライン診療受診施設Yを設置しています」との広告

広告の内容からして、オンライン診療受診施設が提供するオンライン診療を受ける場所の提供サービスについて広告するものと認められる可能性が高く、オンライン診療受診施設に関する広告の規制に服すると考えられる。

作成者であるA病院開設者

B社が作成した
「当社が設置するオンライン診療受診施設Zでは、Cクリニックの医師が〇〇というオンライン診療を行っています」との広告

広告の内容からして、Cクリニックの医師が提供する医療サービスについて広告するものと考えられ、医療広告規制に服すると考えられる。

作成者であるB

 

 次回は、改訂後の医療広告等ガイドラインにおける、オンライン診療に関する医療広告規制の内容と、オンライン診療受診施設に関する広告規制の内容について、解説します。


[1] 詳しい規制については、厚生労働省ウェブサイト「オンライン診療について」のうち「Ⅱオンライン診療の適切な実施に関する医療法上のルール」の「医療法等の一部を改正する法律の一部の施行等について(オンライン診療関係)」「オンライン診療に関するQ&A」の記載がわかりやすい。

[2] 「場所」の提供が定義に含まれるため、自宅等にいる患者に対して、通信プラットフォームとして、提携するオンライン診療を行う医療機関とつなぐサービスは、オンライン診療受診施設には当たらないと考えられる。

[3] 施設設置事業者が定めた管理・運営責任者は、オンライン診療受診施設に常駐・専任であることを要しないが、遠隔で当該施設を管理等する場合も含め、通信機器の不具合や患者急変時等に、患者やオンライン診療を行う医療機関、都道府県等が連絡できる連絡先を提示し、速やかに対応できる体制を確保することが求められる。

[4] 202641日時点で現にその勤務する医師又は歯科医師がオンライン診療を行っている医療機関の開設者については、2027331 日までの間は、変更の届出を要しない事項とされている(施行規則附則3)。

[5] オンライン診療基準に係る改正施行規則は、従前、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で「最低限遵守する事項」として定められていた事項が省令に格上げされたものである。この指針やこれに関する「Q&A」では、オンライン診療に関するさらに詳細な指針が示されている。

[6] 前掲「医療法等の一部を改正する法律の一部の施行等について(オンライン診療関係)」では、オンライン診療受診施設の設置者は、当該施設でオンライン診療を提供する医療機関と協定・契約を結ぶ場合には、患者の選択に資するため、当該医療機関(連携医療機関。複数ある場合は複数。)の名称等を、ウェブサイトへの掲載その他適切な方法により公表すべきことも記載されている。

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