2026.04.21
改正医療法によるオンライン診療規制に伴う医療広告規制の変容
~その2 医療広告規制の広告可能事項の拡大について~
のぞみ総合法律事務所
弁護士 山田 瞳
1.医療広告規制の判断枠組の確認
前回の解説のとおり、医療広告の要件である「誘引性」、「特定性」及び「広告内容が医療サービスに関するものであること」の3つの要件を満たすと、その広告は、医療法上の「医療広告」として、同法による医療広告規制の適用を受けます。
従前から、医療広告規制については、次の枠組によって広告の可否が判断されてきました。

2025年医療法改正による医療広告規制の改訂によっても、この枠組自体は変わりません。
今般の医療広告規制の改訂によって変わったのは、前記②の広告可能事項の内容です。
2.広告可能事項の位置付けと今般の改正による広告可能事項の追加等
(1)位置付けと改正事項
医療法の規定は、何人も、患者の治療選択等に資する情報として広告が認められている法定事項(「広告可能事項」)を除いては、原則として、医療広告をしてはならないこと、ただし、例外的に、その広告がされても医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ないと認められる所定の場合に限っては、広告可能事項以外の医療広告をすることができることを定めています(同法6条の5第3項)。
この例外場面については、所定の条件を満たすことで広告可能事項の限定(原則)が解除されることから、「限定解除」と言われることがあります(前記③)。
2025年改正前の医療法では、15の事項を広告可能事項と定めていましたが、改正により、「オンライン診療」や「オンライン診療受診施設」の規定が新設されたことにより、広告可能事項に、医療機関がオンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行う場合におけるオンライン診療に関する事項が新たに加わって16になりました。また、従前の15の事項の一部についても、医療広告等ガイドラインに追記がなされました。以下で詳しく解説します。
(2)医療機関がオンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行う場合におけるオンライン診療に関する事項の新設(新15号)
広告可能事項について、改正前の医療法6条の5第3項は、1号から14号までで各種の個別事項を、15号では、1号から14号までに掲げた事項に準ずるものとして厚生労働大臣が医療広告告示で定めた事項を包括的に規定していました。
改正により、新たに、15号に、「その勤務する医師又は歯科医師がオンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行う病院又は診療所にあっては、当該オンライン診療を行う旨及び当該オンライン診療の内容に関する事項」が加わり、これに伴い、改正前の15号の包括規定は、条ずれにより16号になりました(次の一覧表の赤字表記部分)。
改正後の広告可能事項の全容(概要)は、次の一覧表のとおりとなりました。
【改正後・広告可能事項一覧表】

新15号が定める、㋐勤務する医師又は歯科医師がオンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行う病院又は診療所における「当該オンライン診療を行う旨」とは、勤務する医師又は歯科医師がオンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行っていることをいいます。具体的な表示例は、次のとおりです。
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また、新15号が定める、㋑勤務する医師又は歯科医師がオンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行う病院又は診療所における「当該オンライン診療の内容」とは、勤務する医師又は歯科医師がオンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行う場合のそのオンライン診療の内容や提供条件のことをいいます。具体的な表示例は、次のとおりです。

なお、上記の表示のうち下線部は、オンライン診療受診施設の名称や場所についての広告ですが、次回解説するとおり、今回の医療法改正で、これも一定の条件付きで広告可能となりました。
また、新15号は、あくまでオンライン診療受診施設を利用したオンライン診療を行う場合のそのオンライン診療に関する広告について定めたものですので、オンライン診療受診施設を利用しないでオンライン診療を行う場合のそのオンライン診療に関する事項は、次で説明する13号の規定によって広告可能となることになります(医療広告等ガイドライン)。
さらに、医療広告等ガイドラインからは必ずしも明らかではありませんが、次で説明する13号の規定が、提供される医療の内容についての広告可能事項や、広告可能となるための条件を詳細に規定して、医療の内容についての広告を厳しく規制していることを踏まえると、オンライン診療受診施設を利用したオンライン診療を行う場合であっても、オンライン診療を通じて提供する具体的な医療の内容について踏み込んで広告しようとするときには、この部分については、13号の規制に服すると推察されます。
(3)提供される医療の内容に関する事項にオンライン診療を実施している旨等を追加(13号)
ア 追加の要旨
医療法6条の5第3項13号は、改正前から、病院又は診療所において提供される医療の内容に関する広告可能事項を定めています。
今回の改正に伴う医療広告等ガイドラインの改訂により、オンライン診療を実施している場合であっても(前記のとおり、オンライン診療受診施設を利用して実施しているか否かを問わないと推察されます。)、13号が定める条件にしたがえば、同号に定める医療の内容に関する事項を広告することができるとされました。また、オンライン診療受診施設を利用せずにオンライン診療を実施している医療機関については、13号により、そのようなオンライン診療を実施していることを広告することができるとされました。
イ 追加による規制の内容
(ア)2種類の広告可能事項
病院又は診療所において提供される医療の内容に関する広告可能事項については、従前から、次のとおり2つの事項に分けられ、それぞれ、規制の態様が異なっています。この点は、改正によっても変わりません。

(イ)①検査、手術その他の治療の方法について
厚生労働大臣が定めた医療広告告示2条は、従前から、①検査、手術その他の治療方法については、5つの事項を広告可能事項として限定列挙しており、改正によってもこの内容は変わりません。5つの広告可能事項について、それぞれの広告可能な事柄や条件等をまとめると、次の表のとおりです。
【表】

今回の改正により、オンライン診療を実施している場合であっても(前記のとおり、オンライン診療受診施設を利用して実施しているか否かを問わないと推察されます。)、表に定める条件にしたがえば、表に定める医療の内容に関する事項を広告することができると考えられます。
(ウ)②提供される医療の内容(①検査、手術その他の治療の方法を除く)について
②については、従前から、①と異なり、広く広告可能事項とされています。例示列挙される具体例は次のとおりです。改正によってもこの内容は変わりません。
-
- 法令や国の事業による医療の給付を行っている旨
- 基準を満たす保険医療機関として届け出た旨
- 往診の実施
- 在宅医療の実施
今回の改正により、オンライン診療受診施設を利用せずにオンライン診療を実施している医療機関については、②提供される医療の内容として、そのようなオンライン診療を実施していることを広告することができると考えられます。
(4)その他各号に掲げる事項に準ずるものとして医療広告告示が定める事項に、オンライン診療基準の遵守に関して必要な事項を追加(新16号)
改正後の医療法6条の5第3項16号の規定は、法6条の5第3項1号から15号のほかは、同項1号から15号に掲げられた事項に準じるものとして医療広告告示で定められたものだけが広告可能である旨を規定しています。
この点、法改正前の医療広告告示4条1項は、20の事項を広告可能事項として限定列挙していましたが、改正により、「オンライン診療基準の遵守に関して必要な事項」(同告示同条項新20号「法14条の3第1項の基準の遵守に関して必要な事項」)が新たに加わり、21の事項が広告可能事項として限定列挙されるに至りました。
医療広告等ガイドラインでは、「オンライン診療基準の遵守に関して必要な事項」とは、次の事項をいうとされています。
-
- オンライン診療を行う医師・歯科医師又はオンライン診療実施病院等がオンライン診療基準を遵守するために患者に対して発信する必要がある事項
- この基準に適合してオンライン診療を実施していること
- この基準に適合してオンライン診療を実施していることに関して広告する必要がある事項
これらの広告可能事項に該当する具体的な表示例は、次のとおりです。
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以上のとおり、改正後の医療法6条の5第3項16号を受けた医療広告告示4条1項20号の規定により、オンライン診療を行う病院又は診療所についての「オンライン診療基準の遵守に関して必要な事項」が広告可能となりました。
次回は、オンライン診療受診施設に関する広告規制の内容等について、解説します。
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