2026.05.14
改正医療法によるオンライン診療規制に伴う医療広告規制の変容
~その3 オンライン診療受診施設に関する広告に対する規制の新設と違反に対する措置~
のぞみ総合法律事務所
1 「オンライン診療受診施設に関する広告」に対する規制とは
(1)全く新しい「オンライン診療受診施設に関する広告」に対する規制
第1回の解説のとおり、2025年改正医療法により、従前の医療広告規制の規定とは全く別に、「オンライン診療受診施設に関する広告」を規制する規定が新たに設けられました(同法6条の7の2)。
医療広告等ガイドラインも、新しく、「第4 オンライン診療受診施設に関する広告について」という項目を設けて、「オンライン診療受診施設に関する広告」に対する規制についての考え方を示しています。
以下では、法令の規定や、医療広告等ガイドラインのこの項目で示された厚生労働省の考え方について解説します。
(2)「オンライン診療受診施設に関する広告」に対する規制の内容
ア 「オンライン診療受診施設に関する広告」の原則禁止と例外解除の枠組み
改正医療法の規定は、次のとおり定めて、オンライン診療受診施設に関する広告は、媒体を問わず、原則として禁止されることを定めています。また、この規律は、「何人」に対しても適用されることも定めています。

他方で、この規定は、例外的に、医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として医療法施行規則が定める要件を満たす場合には、オンライン診療受診施設に関する広告をすることができるとも定めています。
この規定を受けた医療法施行規則1条の10の2は、要旨、次のとおり、例外的にこの広告が認められるための解除要件を定めています。

イ 解除要件①医療を提供するのは医療機関であることの明示
解除要件①について、医療広告等ガイドラインや、医療広告等ガイドラインに関するQ&Aでは、次のとおり説明されています。
-
- 医療を提供するのはオンライン診療受診施設ではなく、あくまで医療機関であることを患者が理解できるように「明示」する必要がある。
- 他の記載と比べ、極端に小さな文字で記載する等の視認性が低いものは「明示」するとは認められない。
- 併せて、連携する具体的な医療機関名も明示することが望ましい。
以上の説明を踏まえると、解除要件①を満たす具体的な表示は、次のようなものになります(医療広告等ガイドラインに関するQ&A・Q4‐2)。

これに対し、次のような表現がオンライン診療受診施設に関する広告でなされると、あたかも当該施設が診療所であるかのような誤解を与えてしまうため、この文言だけでは、解除要件①を満たすには不十分であるとされています。上記のように、「この施設では、提携するDクリニックの甲医師が診療を行っています」といった文言を補足することが必要です。
![]()
ウ 解除要件②医療に関する適切な選択が阻害されるおそれの少ない広告事項
医療法施行規則1条の10の2は、解除要件②を満たす広告事項として、次の表中に定める3つの事項を例示し(表中の①ないし③、同条1ないし3号)、さらに、この3つの事項の他にも、医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない事項であれば広告可能であることを包括的に定めています(表中の④、同条4号)。
これらの各事項と、これらに関する医療広告等ガイドラインの説明をまとめると、次の表のとおりです。表中では、医療法施行規則は「規則」といいます。
なお、医療広告等ガイドラインは、広告可能事項の大前提として、広告できる対象は、医療法が求める届出を行ったオンライン診療受診施設であることも定めていますので、この点も留意を要します(届出を行っていない施設についての広告は、原則に戻り、医療法上は禁止されると解されます)。

(3)「オンライン診療受診施設に関する広告」規制と医療広告規制の比較
以上が、新しい「オンライン診療受診施設に関する広告」に対する規制の内容です。医療広告規制の内容と比較すると、概ね、次の表のとおりで、医療広告規制の内容と比べて規制が緩やかなのは、オンライン診療受診施設が提供するサービスは、あくまで診療を受ける「場所」の提供にすぎないため、「医療」の提供の広告と比較して、不当な広告が患者等の受け手に与えるリスクが一般的には小さいからと考えられます。

2 医療広告規制及び「オンライン診療受診施設に関する広告」規制に違反するとどうなるか
(1)当局による監視の動向
厚生労働省は、医業等のウェブサイトに対するネットパトロール事業を行っており、その結果を公表しています。同事業では、第三者からの通報を受け付ける他、受託事業者がAI等を活用した能動監視もしており、その媒体は、ウェブサイト、X、Instagram及びTikTokとされています(厚生労働省・第7回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会資料2「ネットパトロール事業について(令和7年度)」。
同事業で、令和7年度(但し、2026年2月28日まで)に医療広告規制への抵触の有無を審査した結果、違反があると認めたのは1,842サイト(5225件の違反)で、違反事由の内訳は、次のとおりと報告されています。いずれの医療分野でも、広告可能事項でない事項を、限定解除要件を充足せずに行っているケースが非常に多いことや、美容や歯科の分野で、誇大広告や誤認のおそれのあるビフォーアフター広告等を行っているケースが多いことがうかがえます。

(厚生労働省・第7回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会資料2より抜粋)
また、媒体ごとの違反事由の内訳も公表されており、InstagramとTikTokでは、誤認のおそれのあるビフォーアフター広告が多いこと等がわかります。

(厚生労働省・第7回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会資料2より抜粋)
(2)違反に対する主な措置
ネットパトロール事業等によって、医療広告規制や「オンライン診療受診施設に関する広告」規制に違反するおそれのある広告が認められた場合、まずは、その広告の対象となった医療機関やオンライン診療受診施設に対して、都道府県等による任意の調査が及びます。必要に応じて、広告代理店、雑誌社、新聞社、放送局等の、広告を作成したり掲載したりした事業者に対しても任意の調査が及びます。
任意の調査に応じない場合又は任意での説明や提出される書類に疑義がある場合等、必要な場合には、都道府県知事等は、当該広告を行った者に対し、必要な報告を命じたり(報告命令)、その者の事務所に立ち入り、当該広告に関する文書その他の物件を検査すること(立入検査)ができます(医療法6条の8第1項)。なお、報告命令に対する報告懈怠や虚偽報告、立入検査拒否・妨害等への罰則もあります。
任意の調査又は報告命令や立入検査によって違反を認めた場合、通常は、まず行政指導として、広告の中止や是正等を求めますが、これに従わない場合や違反を繰り返す悪質なケースでは、行政処分として、広告の中止命令や是正命令を下すことができます(医療法6条の8第2項)。なお、これらの命令に従わなかった場合の罰則もあります。
医療機関やオンライン診療受診施設が悪質な違反広告を行った場合には、行政処分として、医療機関に対しては管理者変更命令や開設許可の取消しを、医療機関及びオンライン診療受診施設に対しては期間を定めた閉鎖命令をすることもできます(医療法28条、29条)。
3 結び
以上で見てきたとおり、今般の医療法改正に伴い、従前の医療広告規制は、医療広告に加えて「オンライン診療受診施設に関する広告」を規制するものとして様変わりしました。「オンライン診療受診施設に関する広告」規制は、前記1で述べたポイントさえ押さえれば、医療広告規制ほど厳格なものではありませんが、規制の存在や内容を認識しないまま不用意な広告を行えば、規制に抵触して、前記2のような当局からの措置を受けかねず、また、施設を利用する消費者とのトラブルにもなりかねません。「オンライン診療受診施設」に関連する事業者には、改訂後の規制を踏まえた適正な広告の運用が求められます。
以 上