2026.10.13

2026年8月28日付パブリックコメント結果を踏まえた比較・推奨の留意点(その5)

のぞみ総合法律事務所
弁護士 吉田 桂公

 

(前回からの続き)

3 比較・推奨の留意点

(9)共同募集を行う場合の留意点

ア 共同募集を行う場合の権限明示

 共同募集であっても、各保険代理店は、それぞれ保険業法294条3項に基づき、あらかじめ所属保険会社等の商号等を顧客に明らかにする必要があります。幹事代理店であることのみをもって、非幹事代理店が行うべき権限明示まで当然に代替できるものではありません(パブコメ結果No.106)。

 

イ 共同募集を行う場合の意向把握

 共同募集における意向把握について、顧客の意向は募集過程において変わり得ることを踏まえつつ、共同かつ一連の保険募集の中で適切かつ丁寧に意向把握を行う必要があります(パブコメ結果No.544等)。A代理店とB代理店が共同募集を行う場合、A代理店が意向把握を行ったからといって、B代理店が意向把握を免れるものではないといえます。

 なお、生命保険協会「保険募集人の体制整備に関するガイドライン」[1]は、「募集実態を伴わない、いわゆる「共同取扱」は、保険募集人の自立化および資質向上の観点および公正な募集の確保の観点から問題があることから、保険会社は、共同取扱に関する社内規定を定めたうえで適正な管理を行い、保険募集人は、保険会社における共同取扱に関する社内規定等に従い実施する必要がある」と規定しています(同7頁)。この規定によれば、一方の保険代理店の行為に「募集実態」が伴っていない場合には、「共同募集」ではなく「共同取扱」と整理されます。また、同ガイドラインは、「ある募集人が実質的に保険募集業務や代理店業務等を何ら行っていないにも関わらず、他の保険募集人と成績、手数料を折半する行為」は、「監督指針Ⅱ-4-2-1(3)における「法人等に対する対価性のない金銭の支払いその他の便宜供与」、「過度の便宜供与」の禁止等」を踏まえると、「不適切と考えられる」と指摘しています(同14頁)。これらを踏まえると、一方代理店が他方代理店への送客(募集関連行為[2])しか行わない場合には、「募集実態」を伴っておらず、共同募集には該当しません。

 

ウ 共同募集では、提案商品を両代理店の共通取扱商品に限定できるか?

 この点について、金融庁は、以下のような見解を示しており、共同募集において、提案商品を両代理店の共通取扱商品に限定することはできません。なお、顧客の意向に基づく選別の結果として、共通取扱保険会社の商品が提示・推奨されることまでは否定されません(パブコメ結果No.553)。現状、共同募集の契約書において、提案商品を共通取扱商品に限定しているものは少なくないと思われますので、契約書の修正が必要となるなど、実務への影響があると考えられます。

・ 「共同募集であることや、手数料配分・業務分担等の代理店側の事情を理由として、顧客の意向に先立ち比較推奨販売の対象を共通取扱商品に限定することは適切ではありません」(パブコメ結果No.101)

・ 「共同募集であることのみを理由に、比較対象を共同募集に関与する代理店間で共通して取り扱う保険契約に固定する運用は、顧客の適切な商品選択の機会を実質的に阻害するため、適切とはいえません」(パブコメ結果No.544等)

・ (専属代理店と乗合代理店の共同募集のケースについて)「顧客が専属代理店から説明を受けたことのみをもって、直ちに当該保険会社の商品を希望する意思が明確になったとはいえず、その後、乗合代理店が比較推奨販売に関与する場合には、当該乗合代理店が取り扱う比較可能な同種の保険契約を前提に、顧客の意向に沿った適切な選別・提案を行う必要があります。したがって、専属代理店を先行させることにより、乗合代理店に係る比較推奨販売規制を回避し得る運用が行われる場合には、規制の潜脱として問題となり得ます」(パブコメ結果No.561)

 なお、保険会社と保険代理店が共同募集を行う場合でも、「保険会社と乗合代理店が共通して取り扱う保険契約のみに比較推奨販売の対象を限定することが、顧客の適切な商品選択の機会を実質的に狭める場合」には、適切とはいえません(パブコメ結果No.551)。

 

エ 単独募集に切り替える場合の留意点

 金融庁は、「共同募集の枠組みでは取り扱えない保険契約であっても、顧客の意向に照らし重要な選択肢となり得る場合には、その旨を踏まえ、必要に応じて単独募集への切替え、取扱可能な保険募集人への引継ぎ等により、顧客の適切な商品選択の機会を阻害しないように対応することが求められます」(パブコメ結果No.101)との見解を示しています。例えば、A代理店が意向把握等を行った後にB代理店に送客し、B代理店が商品の比較説明等を行う中で、顧客が両代理店の共通取扱商品以外の商品での提案意向を示し、結果として、B代理店の単独募集となった場合に、A代理店は、保険会社からの代理店手数料を得ることはできません。このとき、A代理店がB代理店から紹介手数料等を取得することができるかが問題となります。この場合の金員の支払いについて、金融庁は、「当事者間において判断されるべき事項であり回答することは困難です」(パブコメ結果No.563)としています。

 ただし、平成27年5月27日付パブリックコメント結果[3]195番(6)では、「A代理店とB代理店が共に狭義の保険募集を行う場合、結果としてA代理店の取扱いのない保険商品がB代理店において販売された場合」に、「B代理店がA代理店に対して、保険会社から得た手数料の一部を支払うこと」について、保険業法282条等の募集規制の潜脱になっていないか等に留意する必要があると指摘し[4]、また、「手数料の一部を支払うことは禁止されないものの、高額な紹介料やインセンティブ報酬を支払う場合の留意点」を記載した監督指針Ⅱ-4-2-1(2)を踏まえ、「支払手数料の設定については慎重な対応が必要」となるとの見解を示しています。これを踏まえると、上記のようなケースで、A代理店がB代理店から紹介手数料等を取得することは、避けるべきと考えます。

 

オ 各代理店の役割分担の説明等

 各代理店は、共同募集の実態や役割分担に応じ、顧客に誤認を与えない方法で、それぞれの役割分担を分かりやすく説明することが重要です(パブコメ結果No.106)。

 

カ 各代理店の役割分担と比較・推奨規制の適用有無

 共同募集の場合であっても、比較推奨販売に係る規定の適用の有無は、各代理店の顧客の意向形成への関与の度合い、顧客への説明・提案の実態等を踏まえて個別具体的に判断されます(パブコメ結果No.549~550)。比較推奨販売に係る規定の適用については、幹事代理店・非幹事代理店の別によって直ちに判断が異なるものでもなく、顧客への説明・提案の実態、顧客の意向形成への関与等を踏まえて個別具体的に判断されます。なお、各乗合代理店が実質的に担う保険募集の実態とは無関係に、形式的な役割分担等を定め、比較推奨販売に係る規定の適用関係を判断する場合には、顧客の適切な商品選択の機会を阻害し得るものとして問題となり得ます(パブコメ結果No.546~548)。

 

(「その6」に続く)


[1] https://www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/taiseiseibi.pdf

[2] 「募集関連行為」とは、保険商品の推奨・説明を行わず契約見込客の情報を保険会社又は保険募集人に提供するだけの行為など、契約見込客の発掘から契約成立に至るまでの広い意味での保険募集のプロセスのうち保険募集に該当しない行為をいいます(監督指針Ⅱ-4-2-1(2))。

[3] https://www.fsa.go.jp/news/26/hoken/20150527-1/01.pdf

[4] 保険業法282条1項・2項は、生保専属の原則について規定しており、乗合は同条3項で例外的に認められているという関係にありますが、こうした中、乗り合っていなくても、報酬(紹介料等)が得られるとなると、この規制は空文化されます。生命保険協会「募集関連行為に関するガイドライン」(https://www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/boshukanren.pdf)6~7頁でも、「保険業法第282条等に関連して、保険募集人が、状況に応じて保険募集人と募集規制が適用されない募集関連行為従事者の立場を使い分けるようなケース」は「募集規制の潜脱につながる行為に該当し得る」としています。

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