2020.08.03

シンガポール留学のすゝめ

のぞみ総合法律事務所所属
Rajah&Tann法律事務所シンガポールオフィス出向中
弁護士 大田 愛子

1 はじめに~企業にとっても注目の留学先

 私は、2019年夏から1年間、日弁連の推薦を受けて、National University of Singapore(シンガポール国立大学、以下「NUS」といいます。)のMaster of Laws(以下、「LL.M.」といいます。)のコースに留学しました。シンガポールは、日本の法曹や法務・コンプライアンス部員の留学先としてはまだまだマイナーですが、英米と同様コモンローの法体系に属する国であり、東南アジアの拠点として各分野で高いプレゼンスを有しています。また、日本との類似点を多く有し、多くの日本人にとって生活しやすい環境でありながら、多民族国家であり、さらに多くの外国人も生活する社会であることや、政府主導型の社会など、社会の在り方には大きな違いがあります。そして、NUSは、欧米のロースクールと比べると学費も安く、日本人の学生も少なく、アジアでの取引の準拠法として指定される場面が増えているシンガポール法はもちろん、国際仲裁や中国や東南アジアの法律などアジア関連の業務を行う上で必要な知識を得ることができる穴場の留学先だと思います。多くの日系企業がシンガポール法人・オフィスにおいても法務・コンプライアンスの機能を充実させている状況に鑑みれば、NUSは東南アジア、そしてシンガポールをビジネスの重要拠点とする多くの日本企業にとってもこれからますます注目するべきロースクールと言えると思います。
 ここでは、私が一年間のシンガポール留学を通じて感じた、留学先としてのシンガポールの魅力、留学先のNUSでの授業・生活、シンガポール生活を通じて感じたことなどについて、振り返りたいと思います。一学生の留学記として読んでいただけますと幸甚です。

2 留学先としてのシンガポールの魅力

 多くの弁護士がアメリカに留学する中、私が、シンガポールに留学を決めた一番の理由は、アジア関連の業務への興味でした。今や多くの企業がシンガポールを東南アジア進出の拠点と位置づけ、地域統轄会社を置くなどしています。また、シンガポールは、紛争解決の分野においてもアジアのハブを自負し、香港と並んでアジア最大の仲裁機関であるSingapore International Arbitration Centre (SIAC)や国際商事紛争専用のSingapore International Commercial Court (SICC, シンガポール国際商事裁判所)を有しています。そのため、東南アジアへの進出を進める日本企業にとって、シンガポールとの関わりは避けては通れず、シンガポール法やシンガポールにおける紛争解決の仕組みを勉強することは、クライアントの皆様のニーズに沿うものでもあると考えました。
 また、シンガポールは、イギリスやアメリカと同じコモンローの法体系を有しています。実際に授業で扱う判例もイギリスやオーストラリアのものが多くあります。NUSLL.M.では、日本などシビルローの法体系を有する国から来た学生は、コモンローの基礎を学ぶ授業が必修科目になります。
 さらに、NUSのロースクールは、世界でもトップクラスのロースクールとして年々評価が高まっており[[1]]、欧米のロースクールに比べて学費も安いため、世界各国から、優秀な学生が集まるというのもNUSの利点です。私の在籍した学年では、シンガポール、中国、インド、日本、韓国、マレーシア、インドネシア、ネパール、パキスタン、スリランカ、ベルギー、イタリア、スイス、ハンガリー、スウェーデン、コロンビア、ニュージーランドなど世界各国から学生が集まっていました。他方で、毎年日本人の学生は少なく、今年も3人のみでしたので、国際的な環境に身を置きやすいという利点もあります。学生のバックグラウンドも、法律事務所でパートナーを務める人から、企業や法律事務所での勤務経験者、学部を卒業したばかりの人まで様々です。
 生活面においても、シンガポールは治安が良く、単身の留学はもちろん家族連れの留学でも安心して生活することができます。治安が良いためか、LL.M.の学生も女性が圧倒的多数を占めています。但し、寮に入らない限り、生活費(特に住居費)が高いという難点もあります。

3 NUSについて

(1)キャンパスについて
 NUSの法学部のあるBukit Timahキャンパスは、メインキャンパスとは離れており、シンガポールの世界遺産であるbotanic gardenの一画という非常に環境の良い場所にあります。このBukit Timah キャンパスには、法学部のほか、公共政策大学院(Lee Kuan Yew School of Public Policy)があります。白い回廊の中に緑の中庭が広がる美しいキャンパスです。

 

(2)カリキュラムについて
 LL.M.の学生は、Asian legal studies, Corporate & Financial Services Law, Intellectual Property & Technology Law, International arbitration & Dispute Resolution, International & Comparative Law, Maritime Law, International Business Law7つの専門分野から専攻を選択するか、専攻を定めない Generalのコースを選択することができます。General を選択した場合でも、各専門分野の授業を選択することは可能ですので、私は、Generalを選択しました。International Business Lawは、NUSSemester 1の授業を履修し、Semester 2は上海にあるEast China University of Political Science and Lawで授業を履修するコースです(もちろん授業は全て英語です。)。一番人気のコースは、International Arbitration & Dispute Resolutionのコースです。シンガポールが国家的に国際仲裁に力を入れているのと同様に、NUSも特に仲裁関連の授業に力を入れているため、International Chambers of Commerce (ICC, 国際仲裁裁判所) Vice-presidentや著名な仲裁人の授業を受けることができます。なお、International Arbitration & Dispute Resolutionには、インド人の学生が多くおり、インドでの国際仲裁の需要と関心の高さをうかがい知ることができます。

(3)授業について
 授業の進め方は、教員次第ですが、一コマの授業が3時間あるため、単に講義のみという授業は少なく、事例問題を議論する授業、学生によるプレゼンテーションがある授業、小テストがある授業等様々でした。概ねどの授業も予習として大量のリーディングを課されます。リーディングの内容は、文献の場合も判例の場合もありますが、シンガポールは、コモンロー(判例法)の国なので、法律を勉強することは、判例を読むことからスタートするのだという印象を受けました。
 成績の評価方法は、主に、open book(ノート等持込方式) の試験、research paper、プレゼン、授業中の発言、出席等です。持込禁止のclosed bookの試験を課す授業もまれにありますが、多くの試験はopen bookで行われるという点は、日本の大学の評価方法との大きな違いだと感じました。Open bookの試験では、より思考力や事実の評価能力が試されているのだと思います。また、グループプレゼンテーションを課す授業の多さにも驚きました。少なくとも私が日本の大学で法律を学んでいたときは、グループワークやプレゼンテーションを授業で課されることはそう多くはありませんでした。しかしながら、実務に出てからは、グループで作業を分担したり議論しながら一つの成果物を作成したり、他人の前でプレゼンテーションをするという機会は多くあるので、いずれも学生のうちに磨いておくべきスキルであると思います。
 ほとんどの授業は、学部生(LL.B.)と一緒に行われます。LL.B.の学生は、成績が就職等に関わるようで、とても真剣に授業を受けており、日本の法科大学院のような雰囲気でした。グループワークもLL.B.の学生と一緒に取り組むことが多く交流を深める良い機会となりました。

(4)印象に残った授業について
ア Singapore Common Law of Contract
 選択したコースに関わらず、コモンローのバックグラウンドのない学生は、Singapore Common Law of Contractという必修授業が課せられます[[2]]。ここでは、シンガポールがどのように旧宗主国であるイギリスの法制度を取り入れたかから始まり、コモンローの基礎的な概念や考え方を学びます。したがって、授業で学習するのは、主にイギリスの古い判例です。古めかしい文体の判例も多く、判例を読み込むのはなかなかに困難な作業でした。しかし、後から振り返ってみると、シンガポール法体系の基礎となるコモンローの基礎的な概念や考え方を理解するとても重要な土台となる授業でした。

イ International Commercial Arbitration
 International Commercial Arbitrationの授業は、著名な仲裁人の教授が担当する授業で、国際商事仲裁に関連する概念・理論、仲裁の進め方、基本的なルールの在り方、仲裁地の裁判所の仲裁への関わりなど、仲裁に関する基礎的な知識を勉強します。国際仲裁は、当事者自治のもと裁判所とは全く無関係に進める手続きと思われがちですが、実際には、仲裁合意の有効性が問題になる場合、仲裁判断の有効性が問題になる場合など、仲裁による問題解決の過程でトラブルが生じた場合は、仲裁地の裁判所の力を借りることになります。したがって、仲裁地の仲裁法の内容や裁判所の仲裁に対する理解は、仲裁地を決める上で重要な要素となります。シンガポールの場合は、仲裁の呼び込みに力を入れているため、特に近時は裁判官の仲裁理論に対する理解も深まり、そのことがシンガポールの仲裁地としての魅力を高めているとのことでした。過去には、シンガポールの裁判所が仲裁法について仲裁の理念にそぐわない解釈を行った際、シンガポールの仲裁の拠点としてのレピュテーションが落ちないよう、わずか半年で仲裁法を改正して仲裁を促進する方向での軌道修正が行われたということもあったようです。
 また、この授業では、模擬仲裁も行われました。各生徒は、事例について事前に主張書面を提出し、期日において仲裁人に対して主張を口頭で説明し、相手方の主張に反論するというものです。相手方の書面や主張の仕方も確認できるので、効果的な書面の整理の方法や期日での話し方などとても勉強になりました。

competition law
 留学前に日本で独禁法関連の業務にも多く関与していたため、シンガポールの独禁法の授業も履修しました。比較的新しい法律なので、日本の独禁法と類似する点も多くありました。また、クロスボーダーの独禁法違反事件も多く日本企業が当事者となった過去の事例もいくつもありました。
 実務家ゲストによるレクチャーも多くありました。ASEAN地域の複数国での合併等に伴う困難やその解消に向けた近時のASEAN一体での競争政策における提携の模索など興味深い話もありました。
 さらに、課題の一つとして、グループで独禁法をわかりやすく説明する動画を撮影し、その動画を、シンガポール独禁法当局(CCCS)の方が評価するという斬新な課題も与えられました。私のグループは、学食のストール同士で価格カルテルがあったという仮定で、トークショー風に独禁法を説明する動画を撮影しました。

M&A
 シンガポールの大手法律事務所の弁護士が授業を担当するM&Aの授業もとても勉強になりました。もともと自分の部下として入所するアソシエイトが法的知識は有しているものの実務的な感覚がないことを憂いて、自ら教鞭を執るようになったそうです。余談ですが、とてもウィットにとんだ面白い先生で、毎回授業に手作りのケーキを持ってきてくださるというスーパーウーマンでもありました。
 授業では、M&Aのプロセス、支払いの問題、表明保証の問題、価格の調整方法、雇用に関する問題、印紙代の問題等の実務的・技術的な問題から、MOUの法的拘束力、秘密保持義務の範囲、Indemnity(補償条項)とWarranty(保証条項)の違いなど根本的な法解釈の問題まで、M&Aに関する様々な論点を勉強しました。実務的な「法律を使う」という視点から問題を検討することで、シンガポールの契約法や制定法と判例法が交錯するコモンローの理解が深まったように思います。
 授業は双方向で先生から学生に問いが投げかけられることも多いのですが、その度にLL.B.の学生が、法的理論に関する知識だけではなく、実務的な幅広い知識を有していることに驚きました。自分が実務に就く前にこれほど広い知識を持っていたか過去の自分を反省せずにはいられませんでした。

3 学生生活について

(1)寮での生活
 私は、キャンパスからすぐ近くの大学の寮に住んでいました。寮は、2階建ての家のようなところに4人が住み、各人の個室の他、共同のキッチン、リビング、トイレ、シャワーがあります。私のルームメイトはインド人2人とベルギー人1人でした。生活習慣の違いに戸惑うこともありましたが、予習や試験前の復習が終わらないときに慰めあったり、一緒に食事をしたり、映画を見たり、様々な話をしたり、日本語を教えたり、たくさんのかけがえのない思い出ができました。

 また、ルームメイト以外とも、食事に行ったり、ハイキングに行ったり、映画を見に行ったり楽しい思い出がたくさんできました。世界中のいろいろな国に友人ができたのは、とても心強く感じます。また、各国法制度は違うものの根底の考え方は共通するところがあり、法学部の学生は法律というある意味共通の言語を有していることや、弁護士業務の多忙さは万国共通であることは、興味深く感じました。

 

(2)Covid-19の学生生活への影響
 世界的に猛威を振るっているCovid-19は、シンガポールでの留学生活にも大きな影響を与えました。NUSも比較的早い段階から対策を導入しました。Semester 2が始まってすぐの2020年1月後半ごろから、中国から帰国後14日以内の者に対する登校禁止、全学生・教員の1日2回の検温、国外に出る場合の登録などが課されるようになりました。その後、同年2月の上旬にシンガポール政府が危険レベルを引き上げたタイミングで、50人以上の授業はオンラインに切り替わりました。50人以下の対面授業については、万が一感染者がいた場合の追跡可能性を上げるため、授業中に出席者の写真を撮るなどの対策が取られました。このように特に初期の段階では、シンガポールは追跡に力を入れていました。
 その後も、入国制限が厳しくなり、大学主催の講演会等が中止になり、さらに3月下旬には、オンライン授業の対象となる授業が増えました。そして、4月上旬には、すべての対面授業が禁止され、図書館も閉鎖されました。同じ頃、政府によりCircuit Breakerという外出制限が発表され、法的にも対面での授業は禁止されました。
 オンライン授業は、最初はつまらないと感じましたが、教員側も授業方法を工夫して改良してくださり、チャットを通じてdiscussionをしたり、音声ファイル付きのPDFを使って学生のプレゼンテーションを聞いたりと、効果的な方法に変わっていきました。こちらも段々と新しい方法に慣れていき、何度も聞き返せる点など、オンラインの方がよいと感じることもありました。
 そして、4月中旬ごろからは、順次semester 2の期末試験が始まっていきましたが、登校することは禁止されているので、すべて在宅での試験となりました。但し、もともとほとんどの試験が、open bookで受ける在宅の試験でしたので、大きな変化はありませんでした。勉強面ではオンラインに変わったことによるデメリットはあまり大きくはなかったのですが、やはり同級生とのコミュニケーションの機会や、新しい友人を作る機会が減ったという意味では、Covid-19による影響は少なくありませんでした。但し、外に出る機会が減る分、ルームメイトとの仲は深まったと思います。

4 シンガポールの生活を通じて感じたこと

(1)多民族国家であることを実感
 シンガポールは、主に中華系、マレー系、インド系の国民から構成される多民族国家です。そのため、日常生活では、英語が使用されていますが、英語、マレー語、中国語、タミル語が公用語に指定されています。地下鉄の構内アナウンスは四か国語で流れます。Covid-19に関連して首相が国民に向けたメッセージを出す際には、一人で、英語、マレー語、中国語の3か国語で演説を行い、驚きました。また、各民族を尊重し平等にするという観点からだと思いますが、シンガポールの祝日は、中華系の春節、マレー系の断食明け、インド系のディパバリ(光の祭典)など、各民族の宗教を祝う日が平等に割り当てられています。多民族国家ならではの各民族に対する配慮や尊重が感じられて、新鮮でした。
 そして、89日はシンガポールの独立記念日ですが、戦車のパレード、ダンス、戦闘機のアクロバット飛行、花火など多くの催しが開催され、盛大に祝われます。また、独立記念日のイベント中は、各チャンネルが、同じ映像を各言語で放送していました。多民族国家ゆえこういった形での国威発揚が重視されているのだと感じました。

(2)立法の速さ
 シンガポール生活で驚いたことの一つは、立法のスピードです。卑近な例ですと、電子スクーターの禁止があります。シンガポールでは、2018年ごろからシェアサイクルに代わって、シェア電子スクーターが普及し、主にフードデリバリーサービスの配達員などが利用していました。私がシンガポールに到着した2019年夏ごろには、歩道上を電子スクーターが頻繁に走っていました。しかし、歩道上の電子スクーターの走行が危険だという声があり、2019年9月終わりに歩行者の死亡事故が起きたのを機に禁止の方向に議論が進み、わずか1か月強後の同年11月初めには電子スクーターを事実上禁止する法律が制定され、翌日から施行され、2020年1月1日から罰則も適用されるようになりました[[3]]。その結果、フードデリバリーサービスは大きな打撃を受けたようですが、フードデリバリーサービスのドライバーには自転車やバイク等への乗り換えの補助金が税金から支払われます[[4]]。日本ですと、誰かの営業を制限するような法律がこのような短期間で制定・施行されることはあまりないので、そのスピード感に驚かされました。圧倒的な与党優位の政治体制や与党と官僚の一体性というシンガポール政治的特徴ゆえの進め方だと感じます。

(3)徹底した取り締まり
 シンガポールでは、Covid-19が問題になって以降、指定された国からの帰国者・入国者には14日間の自宅待機命令が課されるようになりました。そして、自宅待機期間中は、政府の担当者が、自宅待機命令を順守しているかを確認するためにメールをしたり電話をして居場所を確認したりするなどして、徹底的に自宅待機を順守させます。これに従わず、海外から帰国してすぐにシンガポール名物のバクテーを食べに行ったシンガポール人には、6週間の禁錮が言い渡されました[[5]]また、担当者からの連絡に応じず、さらに自宅待機命令に違反して海外渡航をした中国人は、永住権を有していたにもかかわらず、以降の再入国を禁止され、永住権を失いました[[6]]
 そして、202043日には、Circuit Breakerというロックダウンに近い外出制限が発表されました。Circuit Breakerの期間中は、essential な外出のみが許され、その場合でもsafe distanceを確保しなければならず、職場での勤務、登校、飲食店のイートイン、同居家族以外との面会等が禁止されています。さらに、感染防止のため、外出時のマスク着用義務(運動時は適用除外)が課されています。警察官だけでなくenforcement officer と呼ばれる取締官も巡回し違反者を取り締まり、違反した場合には300ドルの罰金が科されます。また、取締権限のないアンバサダーと呼ばれる人たちも巡回し注意を行っています。さらに、一般市民がアプリを通じて違反を通報することもできます。悪質な違反の場合には、起訴され、実際に起訴された人もいます[[7]]
 徹底した法律の執行は、多民族により成り立ち、さらに多くの外国人が生活するシンガポールの秩序を保つための方策なのだと感じます。

5 おわりに

 私にとりNUSへの留学は、新しい人と出会い、新しいことを学ぶとても刺激的な時間となりました。また、新しい世界を学ぶことによって、日本のアジアにおけるプレゼンスの高さや恵まれた環境にも気が付きました。そして、NUSでの生活や日系企業の駐在員の方々との交流を通じて今後の日本や今後の日本とアジアの関係についてもいろいろ考えるきっかけになりました。
 今まさに発展を続ける東南アジアは、多くの日系企業のビジネスにおいて重要な地域であるものの、他方で東南アジアにおけるビジネスは高い法務リスクと隣り合わせでもあります。そのため、東南アジアでビジネスを進める日系企業にとり、シンガポールをはじめ東南アジアの法務や社会的状況に精通した法務人材の育成は今後重要な課題となると考えられます。その際の検討材料として本留学記が一助になれば幸いです。

 

<筆者略歴> 大田 愛子(おおた あいこ) のぞみ総合法律事務所所属

2011年一橋大学法学部卒業、2013年一橋大学法科大学院卒業、2015年弁護士登録(67期)。外資系大手法律事務所勤務を経て、2017年のぞみ総合法律事務所に移籍。2019年夏よりシンガポール国立大学 (LL.M.)に留学。20205月よりシンガポールの大手法律事務所Rajah&Tann法律事務所へ出向。
国際取引契約、労務、コンプライアンス、国内外におけるM&A、訴訟等企業法務を取り扱う。


[1] QS World University Rankings by Subject 2020(https://www.topuniversities.com/university-rankings/university-subject-rankings/2020/law-legal-studies) では、NUSは、アジアで1位、世界12位に位置付けられています。

[2] 2020年入学以降、Common Law Legal System of Singapore Common Law Reasoning & Writing という授業に変更になるようです。

[3] https://www.channelnewsasia.com/news/singapore/e-scooters-banned-footpaths-fines-jail-pcn-bicycles-12060932

[4] https://www.straitstimes.com/singapore/transport/7m-grant-set-up-to-help-food-delivery-riders-affected-by-footpath-ban-replace

[5] https://www.channelnewsasia.com/news/singapore/covid-19-breach-stay-home-notice-bak-kut-teh-jail-12668182

[6] https://www.ica.gov.sg/news-and-publications/media-releases/media-release/singapore-permanent-resident-breached-stay-home-notice-requirements-loses-singapore-permanent-residence-status-and-will-be-barred-from-re-entering-singapore

[7] https://www.channelnewsasia.com/news/singapore/covid-19-man-charged-dinner-gathering-circuit-breaker-12713826


2020年7月3日。
株式会社インテグレックスの運営する「ホットプレス(第89回)」

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