2022.09.12

景表法に基づく管理上の措置指針の改正~アフィリエイト広告に際して講じておくべき表示等の管理上の措置~(その3)

                              のぞみ総合法律事務所
弁護士 山田 瞳

 

4 本改正による本指針の具体的な変更点~アフィリエイト広告を行う事業者に推奨される表示等の管理上の措置~

 ⑶ 本指針の別添における変更点~「①から⑦まで以外の措置」の例の部分~

 本指針の別添では、本改正前、「8 前記1から7まで以外の措置の例」という項目において、事業者が講ずる必要のある具体的な措置の参考例を掲げていましたが、本改正により、当該項目内に、新たに、「⑴ アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示」という項が設けられました。

 この項の冒頭[1]では、

  • まず、検討会の報告書における提言も踏まえ[2]、アフィリエイト広告においては、「アフィリエイトサイトにおける表示について、アフィリエイトプログラムを利用する事業者以外の第三者の体験談や感想であるのか、当該事業者が対価を支払って作成を委ねた表示であるのかを、消費者が判断できない場合がある。」との問題意識が示され、
  • 「一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、アフィリエイト広告を行う事業者は、アフィリエイト広告が当該事業者の表示であることを一般消費者が認識できるよう、アフィリエイトサイトにおける表示において、当該事業者とアフィリエイターとの関係性を理解できるような表示を行うよう、アフィリエイターに求めるなどの対応を行う」旨が記載されました。
  • さらに、「アフィリエイト広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示を行うためには、一般消費者が、当該表示がアフィリエイト広告を行う事業者の表示であることを理解できる文言の使用や、当該文言を表示する位置、大きさ及び色等も含めた、アフィリエイトサイトにおける表示内容全体から、一般消費者がアフィリエイトプログラムを利用する事業者の表示であることを容易に理解できるようなものとなっているかについて留意することが望ましい。」とした上で、望ましい表示等の参考として、下記表3に記載の各例示(図解を含む)が記載されました(本指針9ないし12ページ)。

 本指針(表示等の管理上の措置・・・・・・指針)において、このような表示の内容面(記載ぶり)に言及するのは、この項が初であると思われ、いわゆるステルスマーケティング[3]対策も視野に入れ、新たなアプローチを模索する消費者庁の意気込みが窺えます。

  【表3

項目

例示及び図解

ア  アフィリエイト広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい文言

・一般消費者が広告である旨認識することが困難であると考えられる文言ではなく、例えば、「広告」という文言のように、アフィリエイトサイトにおける表示について、一般消費者がアフィリエイト広告を行う事業者の表示であることを認識しやすい文言を使用すること。

・その上で、当該事業者の具体的な名称等を記載するなど、アフィリエイト広告を行う事業者の表示であることについて更なる明示をすること。

イ  アフィリエイト広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示位置

一般消費者が当該表示を見る際の視線の動きの方向を踏まえた上で、視野に最初に入る画面内に表示すること。

・当該表示が他の表示の情報に埋もれないようにすること。

・アフィリエイトサイトにおける当該事業者の商品又は役務についての表示と当該表示が近接していること。

 (例2及び例3は省略) 

ウ  アフィリエイト広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示の大きさ

・アフィリエイトサイトにおける表示において使用されている文字の平均的な大きさと比べて、少なくとも同程度の大きさにするなど、一般消費者が認識しやすい大きさにすること。

 

 

エ  アフィリエイト広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示の色

・当該表示の背景等に使用されている色と比べて、区別しにくい色ではなく、明確に区別できる色にするなど、一般消費者が認識しやすい色にすること。

 

オ  アフィリエイト広告を行う事業者の表示であることの明示に関するその他の望ましい対応        

・例えば、景表法において「著しく優良であると示す表示」か否かの判断に当たっては、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となることを踏まえると、アフィリエイトサイトにおいて一般消費者がアフィリエイトプログラムを利用した事業者の広告であることを理解できるようにするための表示を行う場合も、表示内容全体から、一般消費者がそのように理解できる表示となっているかについて留意すること。

・特に、アフィリエイトサイトが、スマートフォンの利用におけるウェブサイト、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)等の表示である場合には、画面全体の表示領域の制約等により、広告と広告以外の情報が明確に区別されにくい場合もあることから、一般消費者の理解を妨げないようになっていないかについて留意すること。

 

5 ≪参考≫アフィリエイト広告に関する表示主体性の問題

 本指針は、事業者が景表法に違反することがないよう、講ずべき表示等の管理上の措置の内容を示すことを目的としており、本改正もその目的の範囲内のものですので、アフィリエイト広告について、いかなる場合に、アフィリエイターによる表示がアフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告と認められるか又は認められないかという表示主体性の問題について直接言及するものではありません[4]
 もっとも、景表法261項の規定は、表示等をする事業者に対して、当該表示等の管理上の措置を講じることを義務付けたものですので、広告主がアフィリエイト広告について管理上の措置を講じる場合とは、当該アフィリエイターによる表示が広告主自身の広告と認められることが前提となります。よって、アフィリエイト広告において、表示主体性の問題は、管理上の措置を検討するに際して避けて通れない論点といえます。
 この点、アフィリエイト広告についての表示主体性の問題については、本指針と同日に改正された「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」[5]に、同改正により従前の文言が一部修正されて、次の旨が規定されています。

  • アフィリエイト広告についても、広告主がその表示内容の決定に関与している場合(アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合を含む。)には、景表法上は、広告主が行った表示とされる。そして、アフィリエイターがアフィリエイトサイト内に掲載する広告における表示、ソーシャルネットワーキングサービスへの投稿における表示、アフィリエイターが自らのアフィリエイトサイトに誘導するために行う広告等における表示に関しては、広告に記載された商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される場合には、景表法上の不当表示として問題となる。
  • アフィリエイト広告について、広告主が表示内容の決定に関与しているか否かは、個別の取引実態に応じて判断される。また、広告主との契約等においてアフィリエイターと位置付けられている事業者が、広告主と共同して商品又は役務を一般消費者に供給していると認められる実態にある場合は、当該事業者についても景表法上の問題が生じる場合がある。
  • アフィリエイターが自らのアフィリエイトサイトに単にアフィリエイト広告を行う事業者のウェブサイトのURLを添付するだけなど、当該事業者の商品・サービスの内容や取引条件についての詳細な表示を行わないようなアフィリエイト広告については、通常、不当表示等が発生することはないと考えられる。また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる[6]

 

6 結語

 以上でみてきたように、本改正により、本指針には、アフィリエイト広告に関する表示等の管理上の措置について、極めて多岐にわたる加筆がなされました。
 もっとも、これらの加筆された事項は、その全てをそのまま採用しなければならないというものではなく、これらを参考に、個々の表示等を行う事業者が、その規模や業態、取り扱う商品又はサービスの内容、取引の態様等に応じた必要かつ適切な範囲で、措置を講じるべきものです。
 本改正に伴い、表示等を行う事業者の皆様におかれては、表示等の管理上の措置に係る既存の規程やマニュアルの見直しをされると思われますが、実際に、追加すべき具体的な措置を検討するに当たっては、この「必要かつ適切な範囲」の判断こそが最も悩ましいものと考えられ、当該分野の専門的知見のある弁護士の客観的な意見も仰ぎつつ、その範囲を決するのが有効であるといえます。
 本稿に関しまして、ご不明な点やご質問等がございましたら、お気軽にお問い合わせフォームまでご連絡ください。


[1] 本指針9ページ

[2] 報告書は、消費者庁が実施した消費者向けのアンケートの回答結果を踏まえ、消費者は、商品・サービスの表示について、それが広告主以外の純粋な第三者による感想等ではなく、広告主による広告であると理解できる場合には、それを鵜呑みにするのではなく慎重にその内容を吟味しているものといえることから、表示が広告主の広告である旨を消費者が理解できるようにすることは、消費者の自主的かつ合理的な選択に資するものといえ、同時に不当表示を未然に防止するという指針の趣旨に沿うものといえる旨を述べた上、「アフィリエイト広告においては、それが広告であることが何らかの方法で明記されている場合には、消費者は、それが広告主以外の純粋な第三者による感想等であると誤認することなく、より自らのし好に合った商品・役務の選択が可能となるといえる。そのため、広告主がアフィリエイト広告による宣伝活動を行う場合には、当該アフィリエイト広告において、消費者が広告主との関係性を理解できるよう、広告である旨を認識できるような文言や形(表現、文字の大きさ、色、掲載場所等)で、当該広告主の広告である旨を明記するといった措置を講ずべきである」との提言を行いました(報告書58ページ)。 

[3]ステルスマーケティングについて、消費者庁は、広告主が自ら広告表示を作成するか否かにかかわらず、広告と明示しないで行う広告宣伝と位置付けています(令和4623日開催・第4回景品表示法検討会・資料1・参考2)。

[4] 本改正に際しての意見募集手続においても、表示主体性の問題について質問するものが多数提出されましたが、これに対し、消費者庁は、本指針への意見募集の範囲を超え、個別事案ごとの景表法上の表示主体についての解釈についての質問であり、個別の取引実態に応じて判断されるものであることから、回答することは困難である旨回答し、一般論として、商品又は役務を供給する事業者が表示内容の決定に関与していない限り、一般消費者である購入者が事業者の供給する商品・サービスについてSNS等に感想を記載する場合、当該購入者が記載した感想そのものが当該事業者の行う表示とされることはないと考えられる旨を述べています。

[5] 「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」 第2 4(2)

[6] 「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の改正に際して行われた意見募集の結果の公示では、消費者庁は、広告主が「アフィリエイターやアフィリエイトプロバイダに表示内容を丸投げ」した場合は、「アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるもの」には当たらないと回答しています。これは、このような場合は、「アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合」に該当することを示していると考えられます。

 

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