2022.09.05

景表法に基づく管理上の措置指針の改正~アフィリエイト広告に際して講じておくべき表示等の管理上の措置~(その2)

                              のぞみ総合法律事務所
弁護士 山田 瞳

                        

4 本改正による本指針の具体的な変更点~アフィリエイト広告を行う事業者に推奨される表示等の管理上の措置~

 ⑵ 本指針の別添における変更点~本文の7項目に対応する部分~

 本指針の別添では、本改正前、事業者が講ずる必要のある具体的な措置の参考として、本文における7項目(前記表1の①ないし⑦)に対応して掲げられた下記表2の①ないし⑦の7項目について、それぞれ具体的な例が掲げられていました。
 本改正により、本指針の別添の①ないし⑦の各7項目に加え、別添の冒頭の記載にも、アフィリエイト広告を行う場合の措置についての相当に詳細な具体例の記述が追加されました。追加事項の概要は次のとおりです。

  【表2

項 目 

          改正による追加事項の概要

冒頭

アフィリエイト広告に係るものに関しては、事業者は直接アフィリエイターと契約する場合と、ASP[1]と契約してそのASPを通じてアフィリエイター等と契約する場合があるところ、管理上の措置の実効性を確保するために、自らの表示等の作成に関係するASPやアフィリエイター等との間で、表示等の作成を委ねる契約書において、どの主体が何を行うかについて、役割分担及び責任の所在をあらかじめ明記するなどの対応を行うこと。

①景表法の考え方の周知・啓発の例

アフィリエイト広告を行い、自社の表示の作成をアフィリエイター等に委ねる場合、自ら又はASP等を通じて、アフィリエイター等に対しても景表法の考え方の周知・啓発を行うこと

②法令遵守の方針等の明確化の例

・アフィリエイト広告を行い、自社の表示の作成をアフィリエイター等に委ねる場合、自ら又はASP等を通じて、あらかじめこれらのアフィリエイター等との間で、不当表示等を行わないよう確認するなど、法令遵守の方針等を明確にしておくこと。

・アフィリエイト広告を行い、アフィリエイター等が上記の法令遵守の方針に違反した場合における、債務不履行を理由とする成果報酬の支払いの停止や契約解除等の具体的な措置内容について、自ら又はASP等を通じて、あらかじめアフィリエイター等との間で明確にしておくこと。

③表示等に関する情報の確認の例

【⑴ 企画・設計段階における確認等】
・アフィリエイト広告を行い、自社の表示の作成に当たり、コンサルティング会社や広告代理店等の他の事業者にプロモーションを委ねる場合、これらの事業者がアフィリエイターに対して、不当表示等を助長するような指示等をしていないかを確認すること。

【⑷ 提供段階における確認等】
・アフィリエイト広告を行い、自社の表示の作成をアフィリエイター等に委ねる場合、不当表示等を未然に防止する観点から、アフィリエイター等が作成する表示内容を事前に確認すること。

・アフィリエイト広告を行い、アフィリエイター等に作成を委ねた自社の表示について、自社の人員体制の制約等の理由により、全ての当該表示内容を事前に確認することが困難である場合には、例えば、表示後可能な限り早い段階で全ての当該表示内容を確認することや、成果報酬の支払額又は支払頻度が高いアフィリエイター等の表示内容を重点的に確認することや、ASP等の他の事業者に表示内容の確認を委託すること。

④表示等に関する情報の共有の例

・アフィリエイト広告を行い、自社の表示の作成をアフィリエイター等に委ねる場合、不当表示等を未然に防止する観点から、表示内容の方針や表示の根拠となる情報等をアフィリエイター等と事前に共有しておくこと。

・アフィリエイト広告を行い、アフィリエイター等に作成を委ねた自社の表示について、自社の人員体制の制約やアフィリエイター等が複数に上る等の理由により、当該表示に関する表示の根拠となる全ての情報を事前にアフィリエイター等に共有することが困難である場合には、例えば、アフィリエイター等から表示内容の方針について相談を受け付ける体制を構築することや、ASP等の他の事業者を通じて共有するなどの対応を行うこと。

⑤表示等を管理するための担当者等を定めることの例

アフィリエイト広告の表示等の作成をアフィリエイター等に委ねる場合における表示等の内容を確認する例】

・アフィリエイト広告を行い、表示等の作成をアフィリエイター等に委ねる場合であっても、事業者は、自社の広告として、指示・確認権限を有していることをアフィリエイター等との間で確認すること。

・アフィリエイト広告を行う事業者の表示等管理担当者については、事業者の社内だけでなく、アフィリエイター等に対しても周知すること。

・アフィリエイト広告の作成において、事業者の社内だけでなく、アフィリエイター等においても、表示等管理担当者が設置されるなど、複数の表示等管理担当者が設置される場合、事業者とアフィリエイター等との間で、それぞれの表示等管理担当者の権限や所掌を確認すること。

・アフィリエイト広告の作成において、事業者の社内だけでなく、表示等の作成を委ねるアフィリエイター等においても、表示等管理担当者が設置されるなど、複数の表示等管理担当者が設置される場合、事業者だけでなく、アフィリエイター等の表示等管理担当者も含めて景表法等の表示に関連する法令についての講習を実施すること。

⑥表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ることの例

・アフィリエイト広告の表示等のように、一旦、削除されると、回復させることが困難であるような表示等については、事業者が表示等の保存も含め、根拠となる情報を事後的に確認できるようにするための資料の保管等を行うこと。

・アフィリエイト広告の表示等のように、表示等の根拠となる情報が多数に上り、全ての情報の保管等をすることが困難である場合、事業者は表示等の作成を委ねるアフィリエイター等に対して、アフィリエイター等が当該情報の保管等をすることを明確にすることや、ASP等の他の事業者に当該情報の保管等を委託すること。

・アフィリエイト広告の表示等のように、表示等の根拠となる情報が多数に上り、全ての情報の保管等をすることが困難である場合、事業者は、保管等をする代わりに定期的な表示等の確認を行うなど、不当表示等の未然防止に必要十分な取組をすることや、成果報酬の支払額又は支払頻度が高いアフィリエイター等が作成する表示等の根拠となる情報について重点的に保管等をすること。

【(注2)表示等の根拠となる情報についての資料の例】
・アフィリエイト広告の表示等の作成をアフィリエイター等に委ねる際に行うアフィリエイター等とのやり取り(メール、チャット等)の内容、事業者の社内における表示内容の確認及び決定の過程を示す資料、アフィリエイター等が作成する広告の表示内容に係るソースコード等

【(注3)合理的と考えられる資料の保存期間の例】
・アフィリエイト広告においては、当該アフィリエイト広告に掲載されているアフィリエイトリンクから事業者の供給する当該アフィリエイト広告の対象となっている商品又は役務を購入することができなくなるまでの期間に加え、当該商品又は役務の特徴、性質に応じた合理的な期間

⑦不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応の例

【⑵ 不当表示等による一般消費者の誤認排除を迅速かつ適正に行う例】
・アフィリエイト広告において、不当表示等が明らかになった場合、事業者は、自ら、ASP又はアフィリエイター等を通じて、迅速に不当表示等を削除・修正できる体制を構築すること。

・アフィリエイト広告において、表示等の作成を委ねるアフィリエイター等が事業者との契約内容に違反して、不当表示等を生じさせた場合、事業者は、あらかじめ契約において取り決めた債務不履行の場合に採ることとされている措置(例えば、成果報酬の支払いの停止、支払った成果報酬を返還させる、提携契約の解除等)を迅速かつ確実に行うこと。

【⑷ その他の例】
・アフィリエイト広告のように、アフィリエイター等に表示等の作成を委ねている場合においては、事業者が不当表示等に関する事実関係を迅速かつ正確に確認することが困難であることも考えられるため、不当表示等に関する事実関係を明らかにし、不当表示等による消費者被害の発生・拡大を効果的に防止する観点から、事業者は消費者等の外部からの相談や情報提供を日常的かつ確実に受け付けられる窓口を設置すること(既に設置している連絡相談窓口を活用することを含む。)。

 

(その3)では、「⑶ 本指針の別添における変更点~「①から⑦まで以外の措置」の例の部分~」等として、アフィリエイト広告を利用する事業者に推奨される、アフィリエイト広告を行う事業者の表示であることの明示について解説します。

 (続く)


[1] ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)とは、法人又は個人のアフィリエイターを幅広く募り、アフィリエイトネットワークを構築し、広告主とのマッチングをさせる機能を持つアフィリエイトプログラムを提供する事業者であり、広告主がASPを通じてアフィリエイター等と契約する場合、広告主はASPに対してアフィリエイターの管理を委託することがある。

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