2026.09.07

2026年8月28日付パブリックコメント結果を踏まえた比較・推奨の留意点(その1)

のぞみ総合法律事務所
弁護士 吉田 桂公

1 はじめに

 2026年8月28日に、比較・推奨規制の改正(保険業法施行規則(以下「規則」といいます。)の改正及び保険会社向けの総合的な監督指針(以下「監督指針」といいます。)の改正)に関するパブリックコメント結果(以下「パブコメ結果」といいます。)が公表されました[1]
 このパブコメ結果は、今後の乗合代理店における比較・推奨及び態勢整備のあり方に多大な影響を与えることから、本稿では、パブコメ結果を踏まえた比較・推奨の留意点について解説します。

2 施行日

 改正後の比較・推奨規制は、2028年3月1日から施行されます。同日までに新しい規制の下での実務運用を現場に定着させる必要があるため、その準備期間も含めると、あまり時間はないと思われます。また、金融庁は、「乗合代理店においては、顧客の最善の利益を勘案した業務運営を図る観点」から、施行日を待つことなく、「可能な限り速やかに体制整備を行い、比較推奨販売を適切に実施されることが望ましい」としており、この点からも、速やかな対応が求められます。

3 比較・推奨の留意点

(1)「乗合代理店」とは何か?
 比較・推奨規制は、「乗合代理店」に対して課せられるものですが、この「乗合代理店」の定義は誤解を生みやすいところです。
 しばしば、生命保険会社を複数取り扱っていたり、損害保険会社を複数取り扱っている保険代理店が「乗合代理店」に該当すると思っている方がいらっしゃいますが、生命保険会社1社及び損害保険会社1社を取り扱っている保険代理店も「乗合代理店」に該当します。生命保険・損害保険の別を問わず二以上の所属保険会社等を有する保険募集人は、「乗合代理店」なのです(パブコメ結果No.375)。

(2)生保商品と損保商品でも比較・推奨すべきなのか?
 乗合代理店は、「二以上の比較可能な同種の保険契約」が存在し、選別・提案を行う場合には、規則第227条の2第3項第4号ロ[2]に基づく推奨販売を行う必要があります。
 そして、「二以上の比較可能な同種の保険契約」に該当するか否かについては、主契約程度の意向の共通性が手がかりとなり得ますが、最終的には、顧客の具体的な意向、保険契約の対象となるリスクの種類、保険給付の内容、保険契約の特性・類型等を踏まえて、個別具体的かつ実質的に判断されます(パブコメ結果No.54、325等)。
 例えば、顧客が、「就業不能リスクを補完したい」(「働けなくなった場合の収入の減少に備えたい」)という意向を示した場合、この意向との関係では、「生命保険の就業不能保険」と「損害保険の所得補償保険」は「比較可能な同種の保険契約」に該当するため、推奨販売を行うことになります(パブコメ結果No.47)。
 このように、生保商品と損保商品でも比較・推奨を行うべき場合があるため、注意が必要です。

(3)乗合代理店において、以下のような取扱いは認められるか?

①「保険会社Aは取扱件数が少ないので、新規募集の対象としない」
②「保険会社Bは、保全(既契約者対応)は行うが、新規募集は行わない」
③「保険会社Cは代理店委託契約が終了予定なので、C社の商品は顧客に提案しない」
④「新商品について、教育・研修の実施が必要であり、一時的に販売態勢が整っていないため、当該新商品は提示・推奨しない」
⑤「社内規則で、店舗ごとに取扱保険商品を限定する」
⑥「変額保険販売資格者登録・外貨建保険販売資格者登録をされた保険募集人が在籍していない拠点では、変額保険・外貨建保険を提示・推奨しない」

 ア 基本的な考え方

(ア)保険会社との間の代理店委託契約書等による限定

 規則第227条の2第3項第4号ロにおける「取り扱う保険契約」とは、所属保険会社等との代理店委託契約又はこれに基づく覚書等により、当該代理店が取り扱うこととされている保険契約を指すものであり、「二以上の比較可能な同種の保険契約」についても、当該委託契約又はこれに基づく覚書等により、当該代理店が取り扱うこととされている保険契約を前提に判断されます(パブコメ結果No.39等)。
 すなわち、保険会社との間の代理店委託契約書や覚書等において、新規募集の権限が付与されていれば、当該代理店は当該保険会社の商品を比較・推奨の対象に含める必要があり、反対に、新規募集の権限が付与されていなければ、比較・推奨の対象に含める必要はありません(むしろ、新規募集の権限がなく、無資格募集になることから、比較・推奨の対象に含めてはいけません。)。
 顧客本位の業務運営の確保を目的とする合理的な理由により取扱範囲を限定する場合であっても、代理店単独の社内判断や顧客への説明のみでは足りず、所属保険会社等との間で、対象となる保険契約・保険種類等の具体的範囲や取扱いを代理店委託契約又は覚書等により明確化する必要があります(パブコメ結果No.339等)。
 「保険会社との間の代理店委託契約や覚書で規定している内容が出発点になる」という点の理解が重要です。
 なお、保険会社と乗合代理店との間で当該委託契約又はこれに基づく覚書等により取り扱う保険契約を限定する場合であっても、顧客本位の業務運営の確保を目的とする合理的な理由なく、形式的な委託範囲の限定を行うことにより、保険会社からの便宜供与等の見返りとして、特定の保険会社の保険契約を優先的に取り扱うなど、顧客の適切な商品選択の機会を実質的に阻害するおそれのある業務運営を行う場合には、比較・推奨販売規制を潜脱するものとして問題となり得ます(パブコメ結果No.39等)。

(イ)顧客説明上の留意点

 新規募集停止の対象契約、停止時期、既契約の保全対応の範囲等について、当該委託契約又はこれに基づく覚書等により明確化されているときは、取り扱えない当該保険契約が誤って顧客へ提案されないよう、保険会社及び乗合代理店において実態に即して実効的に管理されることが重要です(パブコメ結果No.50等)。
 取り扱う保険契約の範囲を限定する場合には、顧客に対して、権限明示を適切に実施するとともに、当該乗合代理店が取り扱う保険契約の範囲について誤認を与えないよう、適切に説明することが重要です(パブコメ結果No.52等)。

 イ ①「保険会社Aは取扱件数が少ないので、新規募集の対象としない」という取扱いは、認められるか?

 A社も代理店委託契約又は覚書等により新規募集が可能で、顧客の意向に照らして「二以上の比較可能な同種の保険契約」に含まれる場合には、取扱件数が少ないことを理由に比較対象から除外することは適切ではありません。
 A社を新規募集の対象外とする場合には、所属保険会社等との間で、例えば、新規募集停止の対象契約、停止時期、既契約の保全対応の範囲等について、当該委託契約又はこれに基づく覚書等により明確化することが必要であり、これがなされている場合は、保険募集の場面において、当該保険契約は「二以上の比較可能な同種の保険契約」に含まれず、比較・推奨の対象とはなりません(パブコメ結果No.50)。

 ウ ②「保険会社Bは、保全(既契約者対応)は行うが、新規募集は行わない」という取扱いは、認められるか?

 既契約者対応のために代理店委託契約を継続することのみをもって、当該保険会社の保険契約を当然に比較・推奨販売の対象外とすることは適切ではありません。
 特定の保険契約・種目について、既契約の保全・異動対応のみを継続し、新規募集を行わない取扱いとする場合において、所属保険会社等との間で、例えば、新規募集停止の対象となる保険契約・保険種目、停止時期、既契約対応の範囲や取扱い等について、代理店委託契約又はこれに基づく覚書等により明確化されているときは、新規募集時において、当該保険契約は「二以上の比較可能な同種の保険契約」に含まれず、比較・推奨の対象とはなりません(パブコメ結果No.42~44、351~353)。
 この場合、顧客向け説明資料等に所属保険会社名を記載しつつ、「新規募集時の商品提示又は推奨は行っていない」、「新規募集は行わず、既契約の保全・異動対応のみを行う」等の旨を記載することは、顧客に誤認を与えないための対応として重要です(パブコメ結果No.351~353、355)。

 エ ③「保険会社Cは代理店委託契約が終了予定なので、C社の商品は顧客に提案しない」という取扱いは、認められるか?

 委託契約の終了予定があることのみをもって、当該保険会社の保険契約を当然に比較・推奨販売の対象外とすることは適切ではありません(パブコメ結果No.41、52、320~321)。
 委託契約の解消又は取扱停止に向けた準備期間中であっても、例えば、新規募集停止の対象となる保険契約、停止時期、既契約の保全対応等について、所属保険会社等との間で代理店委託契約又は覚書等により明確化されている場合には、新規募集の場面において、当該保険契約は「二以上の比較可能な同種の保険契約」に含まれず、比較・推奨の対象とはなりません(パブコメ結果No.41、320~321、357)。

 オ ④「新商品について、教育・研修の実施が必要であり、一時的に販売態勢が整っていないため、当該新商品は提示・推奨しない」

 新商品については、保険募集人への教育・研修、システム対応、募集資料の整備等が完了しておらず、当該代理店において適切な説明・募集を行う態勢が整っていない場合には、当該商品を直ちに提示・推奨することまで求められるものではありません。
 ただし、当該取扱いは、代理店の恣意的な判断により比較対象を限定するものとならないよう、所属保険会社等との間で、販売開始時期、取扱範囲、必要な教育・管理態勢等について、明確に整理されていることが重要です(パブコメ結果No.349)。
 なお、販売態勢未整備を理由として、恒常的に特定の商品を比較・推奨販売の対象から除外し、顧客の適切な商品選択の機会を実質的に阻害し得る業務運営を行う場合には、比較・推奨販売規制を潜脱するものとして問題となり得ます(パブコメ結果No.349)。
 また、顧客から当該商品について照会があった場合には、現時点で提示・推奨できない理由や、必要に応じて今後の取扱予定等を分かりやすく説明すること、また、代理店のホームページ等で取扱開始時期を予め公表するなどの対応を行うことが望ましいです(パブコメ結果No.349)。

 カ ⑤「社内規則で、店舗ごとに取扱保険商品を限定する」という取扱いは、認められるか?

 比較・推奨販売の適正化の観点からは、乗合代理店が社内規則等のみにより、営業所・店舗ごとの取扱保険契約を恣意的に限定し、実質的に顧客の適切な商品選択の機会を阻害するような運用は適切ではありません(パブコメ結果No.319、341~342、348)。
 特に、保険会社からの便宜供与等の見返りとして、特定の保険会社の保険契約を優先的に取り扱う目的で取り扱う保険契約を代理店委託契約又はこれに基づく覚書等で限定して業務運営を行うことは、顧客の適切な商品選択の機会を実質的に阻害し得るものとして問題となり得ます(パブコメ結果No.348)。

 キ ⑥「変額保険販売資格者登録・外貨建保険販売資格者登録をされた保険募集人が在籍していない拠点では、変額保険・外貨建保険を提示・推奨しない」

 変額保険・外貨建保険の販売資格登録を有する募集人が特定拠点に在籍していない場合など、当該拠点の保険募集人が、法令上又は制度上、保険募集ができない保険契約については、提示・推奨し得ない場合があると考えられます。
 ただし、乗合代理店のみの判断により、取り扱う保険契約が限定されることは適当ではなく、所属保険会社等との間で、その具体的な範囲や取扱いについて、代理店委託契約又はこれに基づく覚書等により合意が形成される必要があります。
 そして、顧客に対しては、乗合代理店全体として当該保険契約を取り扱うことが可能であり、顧客が当該保険契約の説明又は提案を希望する場合には、必要な資格等を有する他の保険募集人に引き継ぐなど、顧客の適切な商品選択の機会を不当に狭めない対応が重要です(パブコメ結果No.344)。

 

(「その2」に続く)


[1] https://www.fsa.go.jp/news/r8/hoken/20260828/20260828.html

なお、2026年8月31日には、「少額短期保険業者向けの監督指針」における比較・推奨規制の改正に関するパブリックコメント結果も公表されています(https://www.fsa.go.jp/news/r8/hoken/20260831-2/20260831-2.html)。

[2] 規則第227条の2
3 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、法第二百九十四条第一項の規定により保険契約の内容その他保険契約者等の参考となるべき情報の提供を行う場合には、保険契約者及び被保険者に対し、次に掲げる方法により行うものとする。

四 二以上の所属保険会社等を有する保険募集人・・・にあっては、次のイ又はロに掲げる場合における当該イ又はロに定める事項の説明

ロ 二以上の所属保険会社等・・・が引き受ける保険・・・に係る二以上の比較可能な同種の保険契約の中から保険契約の締結又は保険契約への加入をすべき一又は二以上の保険契約・・・の提案をしようとする場合  当該二以上の所属保険会社等を有する保険募集人が取り扱う保険契約のうち顧客の意向に沿って当該二以上の所属保険会社等を有する保険募集人が選別した比較可能な同種の保険契約の概要及び当該提案の理由

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