2023.05.01

シリーズ“法学と経営学の交錯”
企業価値向上に貢献するガバナンスの在り方
~「対話型ガバナンス」のすすめ~
(その2)

のぞみ総合法律事務所
弁護士 吉 田 桂 公
MBA(経営修士)
CIA(公認内部監査人)
CFE(公認不正検査士)

※ 「その1」では、取締役会及び社外取締役の役割の全体像について解説しましたが、「その2」では、社外取締役が担う「監督」と「助言」の意味について、掘り下げたいと思います。

2 取締役会及び社外取締役の役割

(2)社外取締役の役割

イ 支援的監督・牽制的監督、支援的助言・牽制的助言

(ア)社外取締役が担う「監督」と「助言」の意味

 「その1」で記載したとおり、取締役会の「監督機能」は、「経営陣が策定し、取締役会が決定した経営の基本方針や戦略に照らして、指名・報酬の決定を通じた経営の是非の判断やパフォーマンスの評価を行うこと」(経営評価機能)が中核となり、「助言機能」は、経営上の重要事項に関する助言のほか、個別の業務執行(個別案件)に対して助言を行うことも含まれるとする考えがありますが、取締役会の構成員である社外取締役に求められる「監督」と「助言」の役割の意味もこれと同様といえます。
 ただし、それらの中身をより深く分析すると、以下のとおり、「支援」的な側面と「牽制」的な側面に類別できます。

(イ)「監督」の具体的内容―「支援的監督」と「牽制的監督」

  a 「支援的監督」と「牽制的監督」

 社外取締役が行うべき経営の「監督」について、「経営陣による業務執行が暴走しないようにブレーキをかけるという『守り』の意味」で捉えられがちですが、「会社の持続的な成長を実現するための『攻め』(適切なリスクテイクに対する後押し)の意味での監督」も含まれることに留意が必要です(経済産業省「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」[1](以下「社外取締役ガイドライン」といいます。)p.15)。
 すなわち、「個別の業務執行の決定は、経営者と会社との利益相反が生ずる場合を除き、法令で許される範囲で経営者に委譲」し(一般社団法人日本取締役協会「社外取締役・取締役会に期待される役割について(提言)」(20143月)[2]。以下「日本取締役協会提言」といいます。)p.2)、経営陣による業務執行が、会社の中長期的な経営戦略等と整合性があり、「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上の観点」から適切に行われていると評価できる場合には、社外取締役は経営陣を支援する(社外取締役ガイドラインp.1416)――これは、いわば、「支援的監督」といえます。他方で、経営陣の業務執行状況を評価・検証する中で、「長期間連続した業績低迷や組織ぐるみの大規模な不祥事発生」が見られるなど、当該経営陣に経営を委ねることが妥当ではないとの判断に至れば、社外取締役は、企業価値毀損防止のため、当該経営陣に交代(「不再任又は解任」)を迫る(社外取締役ガイドラインp.3637)――これは、いわば、「牽制的監督」といえます。
 このように、社外取締役が行う「監督」には、「支援的監督」と「牽制的監督」の役割があると考えられます(図1参照)。

  <図1:支援的監督・牽制的監督、支援的助言・牽制的助言>

  
  b 「監督」に不祥事の発見は含まれないこと

 なお、しばしば、「社外取締役が『監督』しても、不祥事を防ぐことはできていない」との批評が見られます。
 しかし、日本取締役協会提言p.23にもあるように、「社外取締役・取締役会による経営者の『監督』とは、自ら動いて隠された不祥事を発見することではな」く、「社外取締役は、不祥事の発生を防止するリスク管理体制の構築を『監督』し、『監督』の過程で不正行為の端緒を把握した場合は適切な調査を行うべきであるが、隠された個別の不祥事の発見自体は社外取締役による経営者の『監督』の直接的な目的ではない」といえます[3]
 このように、社内の実情等に精通していない社外取締役に不正の摘発の役割は求められておらず、「監督」に不祥事の発見は含まれないと考えられます。

(ウ)「助言」の具体的内容―「支援的助言」と「牽制的助言」

 「助言」についても、社外取締役は、自らの知識・経験等をもとに、「経営の方針や経営改善」(CGコード「原則47.独立社外取締役の役割・責務」)といった経営上の重要事項のほか、個別案件について、企業価値向上の観点から、それを推進する方向での助言――これは、いわば、「支援的助言」といえます――を行ったり、他方で、企業価値毀損防止のために、リスクを抑制する方向での助言――これは、いわば、「牽制的助言」といえます――を行う役割があると考えられます(図1参照)。

 

(「その3」に続く)


[1] https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200731004/20200731004-1.pdf

[2] https://www.jacd.jp/news/opinion/140307_01report.pdf

[3] 藤田友敬著「「社外取締役・取締役会に期待される役割日本取締役協会の提言」を読んで」(「旬刊商事法務」2038417頁)でも、「企業内部で密かに行われる不正の摘発といった役割は、そもそも社外取締役に期待すべきではない役割・機能の最たるものなのであり、そのようなことを期待して社外取締役の導入を勧めたり、そのような機能が果たせるか否かをもって社外取締役の意義を評価したりする筋合いではない」と指摘されています。

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